局所麻酔中毒とは?

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局所麻酔中毒について解説

新人くん
新人くん

局所麻酔中毒って、手術室でも起こることあるんですか?

まめきち先輩
まめきち先輩

局所麻酔の手術だけでなく全身麻酔でも起こることがあるんだよ。
症状などについて詳しく解説していくよ!

 今回は局所麻酔中毒について解説していきます。症状や対策、対応について詳しく解説します。

局所麻酔中毒とは

 局所麻酔中毒とは、局所麻酔薬が血管内に迷入・過量投与により全身に過剰に移行したことによって引き起こされる中毒症状です。局所麻酔中毒はまれではありますが、重篤な中枢神経症状や心血管系障害を引き起こす可能性があるため、早期発見と迅速な対応が必要です。

症状

  • 口唇のしびれ
  • 耳鳴り
  • 金属味
  • めまい
  • 筋肉のけいれん
  • 意識消失、呼吸抑制、昏睡
    【心血管系】
  • 徐脈、血圧低下
  • 心室性不整脈
  • 心室細動、心停止

 局所麻酔薬が血管内に迷入、過量投与により局所麻酔薬が急激に血中に入り込み、全身に回り症状が出現します。

 局所麻酔薬が脳内に作用することで抑制性神経(主にGABA作動性神経)の働きをブロックします。ブロックされることで抑制が効かなくなり中枢神経の興奮が優位になります。その結果、口唇のしびれ・耳鳴り・金属味・めまい・筋肉のけいれん・意識消失、呼吸抑制、昏睡などの症状が出現します。投与直後5〜10分は、特に注意深く観察することが重要です。

 重症化すると心血管系の症状がでます。局所麻酔薬は心筋のナトリウムチャンネルやカルシウムチャンネルにも作用します。心筋細胞の活動電位が障害され、伝導異常や収縮力低下が発生します。心筋の興奮性が低下し、不整脈や徐脈が出現します。その結果、血管拡張も引き起こすため、血圧低下にも繋がります。症状が進行すると心停止にまで進行することもあります。

発生直後の対応方法

  • 麻酔薬の投与中止
  • 酸素投与、気道確保
  • 痙攣や循環動態のコントロール
  • 脂肪乳剤の投与
  • チームでの役割分担

麻酔薬の投与中止

 症状が出現した場合は、直ちに麻酔薬の投与を中止します。局所麻酔中毒発生時は、循環抑制や血圧低下などの症状がでます。そのため局所麻酔中毒症状発生時は、局所麻酔の投与をすぐに中止し循環を安定させるために細胞外液を補液しましょう。

酸素投与・気道確保

 症状が発生した場合は、酸素投与をすぐに始めましょう。呼吸が不安定ならバックバルブマスクによる補助換気を行い、気道確保を行いましょう。痙攣や意識障害が進行する場合は、気管挿管も検討しましょう。

痙攣や循環動態のコントロール

 痙攣が出現した場合は、ミダゾラムなどのベンゾジアペン系薬剤の投与を検討する必要があります。プロポフォールなどの循環抑制が強い薬剤は、使用を控える方がいいです。特に循環が不安定な場合は、バイタルが崩れる可能性があります。

 血圧低下や徐脈に対しては、昇圧薬やアトロピンを使用しましょう。心停止や致死性不整脈にはACLSに準拠した処置を実施しましょう。

脂肪乳剤の投与

 脂肪乳剤の投与は、局所麻酔中毒特有の治療方法です。脂肪乳剤は局所麻酔薬を取り込んで毒性を中和すると考えられています。

【初期投与(日本麻酔科学ガイドライン参考)】

  1. 20%脂肪乳剤1.5ml/kgを1分以内にボーラス投与をする
  2. 続いて、0.24ml/kg/minの速度で持続静脈注射する
  3. 必要であれば、ボーラス投与を最大で2回(合計3回まで)繰り返すことができる
  4. 最大総投与10ml/kgを超えないように注意する

 脂肪乳剤がどこにあるのか必ず確認しましょう。また、局所麻酔の手術のときは部屋に準備しておくとすぐに投与できるかもしれません。

チームでの役割分担

 急変時はチームで協力して救命していくことが大切です。記録や麻酔科医の指示された薬剤を準備するなど次に何が必要で何を準備しないといけないのか普段から想像しながら行動することで急変にあたったときにすぐに行動できるようになります。

局所麻酔中毒を予防する方法

新人くん
新人くん

局所麻酔中毒を予防する方法ってあるんですか?

まめきち先輩
まめきち先輩

予防する方法はいくつかあるから紹介するね!

  • 血管内誤注入を防ぐ
  • 分割投与を徹底する
  • 最低限必要な量・濃度を使用する

血管内の誤注入を防ぐ

 注入前に必ず陰圧吸引を行いましょう。注射針やカテーテルが血管内に入っていないか陰圧吸引を行うことで血液が引けないことで確認することができます。陰圧吸引をかけたときに血液が引けるようなら必ず医師に声をかけましょう。

分割投与を徹底する

 一度に大量投与をした場合、もし血管内に注入されているとバイタルが大きく崩れます。そのため、5mlずつなど小分けしてゆっくり少量ずつ投与しましょう。注入の合間に患者の反応を確認しバイタルサインや症状に変化がないか観察しましょう。

最低限必要な量・濃度を使用する

 過量投与は重大なリスクになるため、患者の体格や年齢、基礎疾患に応じて投与量を調節しましょう。高齢者、低体重、腎・肝機能障害のある患者さんは代謝・排泄が遅れるため特に注意が必要です。

まとめ

 今回は、局所麻酔中毒について解説しました。

 局所麻酔は、患者さんの術後のQOLの向上のために大切な処置です。局所麻酔中毒は稀ですが、発生すると重篤な転帰をとる可能性があります。そのため、正しい手技・的確な観察・迅速な対応が求められます。

 これから手術室看護師を目指す方や、新人看護師の皆さんの参考になれば嬉しいです。今後も実践に役立つ情報を発信していきますので、ぜひチェックしてくださいね!

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