全身麻酔の大切な3つの要素とは?

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全身麻酔をするうえで何が大切なのか

新人くん
新人くん

全身麻酔って、患者さんが寝てるイメージがありますけど、実際に大切なポイントってあるんですか?

まめきち先輩
まめきち先輩

いい質問だね!
全身麻酔をかけるうえで大切なことを今回は解説していくよ!

 全身麻酔をかけ維持するにあたり大切なことが3つあります。それは、鎮痛・鎮静・筋弛緩です。今回はこの3つについて解説していきます!

鎮痛について

鎮痛の役割と重要性

 鎮痛とは、痛みの伝達を遮断または抑制する作用のことをいいます。手術中、患者さんは意識がなくても身体は痛みに反応します。痛みがあると交感神経が刺激されて血圧や心拍数が上昇し、体に負担がかかります。

 そのため、オピオイドなどの鎮痛薬を使用して、痛みの信号を遮断することが大切です。また、術後の痛みを軽減するためにも、術中からの予防的鎮痛が効果的です。

新人くん
新人くん

麻酔で寝てるから、痛みは感じてないと思ってました!

まめきち先輩
まめきち先輩

そう思われがちだけど、実際には鎮痛薬を使って身体の反応を抑えてるんだよ!

鎮痛に使用される薬剤について

 ※鎮痛に使用される薬剤は、病院によって変わってきます。下記で上げる薬剤がすべてとは限りません。

  • オピオイド系
  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン

オピオイド系

 フェンタニル:即効性があり、術中の痛みのコントロールによく使用される。
 レミフェンタニル:超短時間作用型。手術中の急な刺激に対応しやすい。
 モルヒネ:術後鎮痛に使うが、効果の持続時間や呼吸抑制などの副作用に注意が必要。

NSAIDs

 ソセゴン:強力な鎮痛作用を有し、モルヒネなどのオピオイドとの併用でオピオイドの使用量を減らす効果がある。一方で腎機能への影響・出血リスクに注意が必要。
 ボルタレン:解熱・炎症抑制・鎮痛作用に優れている。一方で腎機能や胃粘膜への影響に注意。
 ロピオン:消化管障害が比較的少なく、術後疼痛管理にも広く用いられる。一方でNSAIDs全般に共通するが、腎障害・出血傾向には注意が必要。

アセトアミノフェン

 アセリオ:中枢性の鎮痛・解熱作用を持ち、NSAIDsと異なり出血リスクや腎障害リスクが比較的少ないため、小児・高齢者にも使用しやすい。一方で肝機能障害のある患者や、肝代謝に影響する薬剤との併用には注意。

鎮静

鎮静の役割と重要性

 鎮静とは、患者さんの意識レベルを低下させ、眠ったような状態にします。脳の活動レベルを一時的に抑制させるために鎮静薬を使用します。

 全身麻酔をするうえで、鎮痛がなぜ重要かというと患者さんは手術に対して大きな不安を感じています。鎮静をかけることで、その不安や恐怖心、記憶もなくなり、安心して手術を受けることができます。

新人くん
新人くん

確かに、手術中の記憶が残ってたら怖いですよね…。

まめきち先輩
まめきち先輩

そうそう。記憶がないこと自体が患者さんの負担軽減になるんだよ!

鎮静に使用させる薬剤について

※鎮痛に使用される薬剤は、病院によって変わってきます。下記で上げる薬剤がすべてとは限りません。

  • 静脈麻酔薬
  • 吸入麻酔薬

静脈麻酔薬

 プロポフォール:速やかな意識消失作用があり、導入・維持両方に使い、覚醒が早いのも特徴。悪心・嘔吐が少ない。しかし、血圧低下や呼吸抑制を起こすことがあり、投与量の調整が重要。
 ミダゾラム:ベンゾジアゼピン系の薬で、不安を和らげる鎮静・健忘作用が強い。しかし、長時間作用型で、術後に眠気が残ることもある。
 ケタミン:解離性麻酔と呼ばれる独特の作用を持ち、鎮痛・鎮静が同時に得らる。血圧低下が少なく、呼吸も比較的保たれやすいため、緊急などでも使用。しかし、幻覚・悪夢などの精神症状が術後に出ることがある。

吸入麻酔薬

 セボフルラン:吸入麻酔薬の中でもっとも一般的。導入・覚醒も早い。小児から高齢者まで幅広く使え、気道刺激が少ない。しかし、血圧低下などに注意。肝機能に負担がかかることもある。
 デスフルラン:最も覚醒が早い吸入麻酔薬。短時間手術に適しており、回復時間が短く、術後の管理がしやすい。しかし、気道刺激が強く、喘息や咳が出やすい人には注意。
 イソフルラン:作用が安定しており、長時間の手術にも対応。麻酔の深さを安定して維持できる。しかし、導入・覚醒にやや時間がかかるため、短時間手術には不向き。

筋弛緩

筋弛緩の役割と重要性

 筋弛緩とは、筋肉の動きを一時的に止めることをいいます。気管挿管や手術中の筋肉の緊張緩和のために使用されます。

 全身麻酔をするうえで、鎮痛がなぜ重要かというと安全に手技を行うためです。筋弛緩を使用していないと声帯などの緊張が残ります。そのため挿管チューブが通りにくいことがあります。また、咽頭反射がでることで挿管操作の妨げとなってしまいます。
 また、筋弛緩薬を使用していないと術野の安定化ができないことや患者さんの不随意運動が発生してしまいます。腹腔鏡手術など、体内の細かい操作を必要とする手術では、筋肉の動きをとめることで臓器が動かず術野が安定します。その他にも、神経の近くの手術をしている時、筋肉が反射的に動くことで神経を誤って断裂させてしまうリスクがあります。

新人くん
新人くん

患者さんの体が動くと危ないですもんね!

まめきち先輩
まめきち先輩

そのとおり!特に腹腔鏡手術では視野の安定が命なんだよ!

筋弛緩に使用させる薬剤について

※鎮痛に使用される薬剤は、病院によって変わってきます。下記で上げる薬剤がすべてとは限りません。

  • 脱分極性筋弛緩薬
  • 非脱分極性筋弛緩薬
  • ダントロレン

分極性筋弛緩薬
 スキサメトニウム:脱分極性・超短時間型で、作用発現は30秒以内と非常に速い。緊急気道確保時や迅速導入時に使用される。しかし、高カリウム血症や悪性高熱症を誘発するリスクがあり、既往歴や家族歴に注意が必要です。持続性コリンエステラーゼ欠損症では作用が遷延することがあります。

非脱分極性筋弛緩薬(拮抗薬:スガマデクス)
 ロクロニウム:非脱分極性・中間作用型で、速やかな作用発現(1〜2分)が特徴。安定した筋弛緩作用と心血管系への影響が少ない。しかし、肝・胆道系排泄が主であり、肝障害時には作用時間が延長することがある。
 ベクロニウム:非脱分極性・中間作用型で、ロクロニウムよりも作用発現がやや遅い(2〜3分)。心血管系への影響が極めて少ないため、循環動態に配慮が必要な症例で有用。しかし、代謝・排泄は主に肝臓で行われ、肝機能低下時には作用が延長する可能性がある。

ダントロレン
 悪性高熱症の唯一の治療薬。筋小胞体からのカルシウム放出を抑制することにより筋収縮を抑える薬剤。しかし、再構成に時間を要するため、常備・準備体制の整備が重要。肝機能障害や静脈炎のリスクがあるため、投与後の経過観察が必要

まとめ

 今回は、全身麻酔について解説しました。鎮痛・鎮静・筋弛緩の3つのバランスが重要です。

 薬剤の種類や作用、副作用を理解しておくと、使用している薬剤で医師の意図や手術中の流れも把握しやすくなります。

 これから手術室看護師を目指す方や、新人看護師の皆さんの参考になれば嬉しいです。今後も実践に役立つ情報を発信していきますので、ぜひチェックしてくださいね!

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