挿管とは
挿管(そうかん)とは、患者の口や鼻から気管チューブ(気管内チューブ)を気管内に挿入し、人工的に呼吸を確保する医療行為です。一般的には、全身麻酔下の手術や、意識障害・呼吸不全などで自発呼吸が困難な状態の患者に対して行われます。挿管によって、確実な酸素化を実現することが可能になります。
挿管の介助とコツについて学ぼう

挿管って、麻酔科の先生が覗いていて、自分が何をすればいいのかよくわからないんです。

そうだね。
じゃあ今回は挿管について学んでいこう!
挿管介助の準備〜点検
挿管の準備
挿管介助の手順は、まず物品の準備から始まります。必要な物品を以下のとおりです。
- 挿管チューブ
- 聴診器
- カフに空気を入れるためのシリンジ
- 挿管チューブを固定するためのチューブ
- 喉頭鏡
これらの物品が不足していると、挿管ができなかったり、安全に行えない可能性があります。確実に揃っているか確認しましょう。
挿管物品の点検
次は、物品の点検を行います。準備した物品は、以下のポイントを中心に必ず点検してください。
- カフが破れていないか
- 聴診器で音が聞こえるか
- 喉頭鏡のライトは点灯するか
上記の点検は必ず行ってください。点検をせず使用した場合、安全な挿管を行うことができません。

何事も準備が大切なんですね!

挿管チューブのカフ確認は麻酔科医が確認することもあるけど、看護師もダブルチェックしようね!
実際の挿管とコツ
これから挿管の手順とコツについて説明いきます。実際の手順に沿って解説していきますので想像しながら読んでみてください!
挿管の手順
※迅速導入はこの限りです。
- ロクロニウムを投与する
- スニッフィングポジションをとる
- 喉頭鏡を渡す
- 挿管チューブを渡す
- カフに空気を入れる
- 聴診をする
- 挿管チューブを固定する
① ロクロニウム投与
挿管のために麻酔科医がロクロニウムを投与します。投与後、1〜2分間カウントを行います。(作用発現は約60〜90秒)TOFや筋弛緩モニターなどを使用している場合は、モニターの測定値を確認して挿管することが多いです。
筋弛緩薬が投与されるタイミングを自分で見てカウント始めますと声に出すことで医師からの信頼も獲得することができます!
② スニッフィンングポジションを取る
挿管時には、気道が見えやすい体位を取ることが重要です。それが「スニッフィンングポジション」です。

この姿勢は、口腔・咽頭・喉頭の軸が一直線にし、喉頭展開や挿管を容易にすることが目的です。スニッフィンングポジションのポイントを以下にまとめています。肥満体型の患者さんの場合は、図よりも肩に枕を挿入し高さを出すことで口腔・咽頭・喉頭の軸が一直線になります。
- 頸部屈曲
- 後頭部挙上
- 枕やタオルを肩の下または後頭部の下に挿入

スニッフィンングポジションって、安全な挿管に必要なんですね!

そうだね!
スニッフィングとは英語で「匂いを嗅ぐ」という意味なんだよ。匂いを嗅ぐ姿勢に似ていることからスニッフィンングポジションと呼ばれているよ。
③ 喉頭鏡を渡す
麻酔科医に喉頭鏡を渡します。口腔内に分泌物が多いと視野が確保できない、吸引を準備しておくと医師から一目おかれる看護師になることができます!
④ 挿管チューブの挿入
喉頭鏡で喉頭展開を行ったら挿管チューブの挿入します。医師は、下記のような図で見えていると思います。声門の先に気管があるため声門の間を狙って挿管チューブを挿入します。その際、医師は声門を見失わないため口元が見えません。挿管チューブを渡したあとに広角を引っ張ることで医師が挿管チューブを挿入しやすくなります。そのため広角を引っ張ることがコツになります。

⑤ カフに空気を入れる
挿管チューブを挿入後、すぐにカフに空気を注入します。カフが膨らむことで、気管と密着します。カフの空気が入っていないと肺に十分な酸素が入らないため酸素化が悪くなりSpO₂が低下します。カフは、成人の場合5cc程度入れますが小児の場合は少し少なくいれないと気管が傷ついてしまいます。そのため小児の場合は医師に確認し空気を入れましょう。
⑥ 聴診する
挿管後は正しく気管に入っているか確認するために聴診を行います。聞く順番は、心窩部→左右の肺です。食道挿管になっていると心窩部の聴診時エアの音がします。そのため何も聞こえないことが正解になります。
左右の肺を聞く意味は、片肺挿管になっていないか確認するために行います。挿管チューブが深く入ると片肺だけにしか酸素を送ることができず酸素化が悪くなります。そのため挿管後、もしかしたらカフを抜き再度カフをいれる可能があります。そのためシリンジを近くに置いときましょう。左右の肺を聴診する際、前胸部で聴診するのではなく側胸部で聴診することがコツです。前胸部だと心音も聞こえてしまいエアの音が聞こえないこともあるためです。
⑦ テープで固定する
無事挿管を終えたら挿管チューブをテープで固定します。その際、テープの端を折り曲げておくことがコツです。折り曲げおくことで医師がテープを貼りやすくなります。

挿管するためには、たくさんの工程があるんですね!

挿管するためにはいろいろなステップがあるんだよ。
コツも記載されているからこのコツを実践する医師からの信頼の獲得やスムーズな挿管をすることができるよ!
まとめ
今回は「挿管」について解説しました。挿管は、全身麻酔を行う際の最初の大切なステップです。挿管でつまずくと手術の進行にも影響します。
手順を理解し、コツを意識して行動することで、スムーズな挿管介助ができるようになります。
これから手術室看護師を目指す方や、新人看護師の皆さんの参考になれば嬉しいです。今後も実践に役立つ情報を発信していきますので、ぜひチェックしてくださいね!
コメント