硬膜外麻酔とは?

硬膜外麻酔の体位や役割について、正直よくわからないです・・・

じゃあ今回は、硬膜外麻酔について解説していくよ!
今回は硬膜外麻酔の役割や体位、注意点について解説していきます。
硬膜外麻酔とは、脊椎の硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し、神経の伝導を一時的に遮断する麻酔方法です。術中・術後の鎮痛効果が高く、患者のQOL向上にも貢献します。
単独で用いられることもありますが、全身麻酔と併用されることも多く、安全性や効果を高める役割も担います。
硬膜外麻酔の体位と保持のポイント
硬膜外麻酔は主に以下の2つの体位で実施されます。各病院で採用している体位で行ってください。各体位についてのポイントを解説していきます。
座位
座位は、解剖学的構造がわかりやすく、穿刺がしやすい体位です。
- ベッドに端座位で座ってもらい、足台を用いて前屈姿勢をとる。
- 「背中を丸めてください」と伝え、猫背になる。
- 肩の力を抜き、腕は膝の上や台の上に置く。
- 頭部はおへそを見るように軽く前屈する。
- 身体が左右に傾かないように、看護師やが肩や腰を支える。
- 手術台が硬い場合は、座骨が痛くなるのでクッションを使用しても良い。
側臥位
側臥位は、手術室での体位移動が少なく、継続的な麻酔管理にも適しています。
- ベッドに側臥位になり、膝と股関節をできるだけ曲げて丸くなるように声をかける。
- 頭部は枕で支え、背中を穿刺側に向ける。
- 「肩と腰を一直線にしてください」と伝え、身体がねじれないように注意する。
- 両腕は前に出して楽な位置に置く。
- 体位を保持するため看護師が腰部、肩に手を置き支える。
ポイント
- 椎間を開くことで穿刺しやすくなるためしっかり背中を丸めてもらう。
- 高齢者や腰痛がある患者には無理な体位を強要せず、可能な範囲で調整する。
- 穿刺中の急な動きによる神経損傷のリスクや、咳嗽に注意し、声掛けと観察を行う。
- 側臥位の場合、上の肩が前胸部側に出てきてしまい肩と腰がねじれてしまうため上の肩が出ないように注意しましょう。
硬膜外麻酔の禁忌

硬膜外麻酔って、誰にもできるわけじゃないんですね?

その通り!
禁忌についてしっかり押さえておこう!
硬膜外麻酔には、以下の禁忌事項があります。
- 患者の協力が得られない場合
- 穿刺部位の皮膚が感染している場合
- 頭蓋内圧が更新している場合
- 感染症、敗血症がある場合
- 出血や脱水で循環血液量が減少している場合
- 出血傾向あるいは抗凝固薬・抗血小板薬が投与されている場合
患者の協力が得られない場合
硬膜外麻酔を行うには、座位または側臥位で行う必要があります。そのため、座位または側臥位を保持できない患者さんには硬膜外麻酔を実施することができないため患者の協力が得られない場合は禁忌とされています。
穿刺部位の皮膚が感染している場合
穿刺時に皮膚の感染が硬膜外腔へ持ち込まれる可能性があり、局所感染の波及による膿瘍形成や髄膜炎のリスクがあるため、皮膚感染がある場合は禁忌とされています。
頭蓋内圧が更新している場合
頭蓋内圧が高い状態で硬膜外麻酔を行うと、硬膜外腔への局所麻酔薬の注入によって脊髄液の圧力分布が変化し、脳ヘルニア(脳幹の圧迫)を引き起こす危険があります。これは生命に直結する重大な合併症となるため、禁忌とされています。
感染症、敗血症がある場合
全身感染がある状態で硬膜外カテーテルを挿入すると、カテーテルを通じて硬膜外腔に病原菌が侵入し、硬膜外膿瘍や脊髄炎を引き起こす恐れがあります。感染の波及リスクが高いため、禁忌とされています。
出血や脱水で循環血液量が減少している場合
循環血液量が減少している状態では、硬膜外麻酔による交感神経遮断により血圧が著しく低下する可能性があります。また循環不全を引き起こし、臓器の虚血を招くリスクがあるため、禁忌とされます。
出血傾向あるいは抗凝固薬・抗血小板薬が投与されている場合
このような状態では、針やカテーテルによる穿刺で硬膜外血腫が起こるリスクが高まります。硬膜外血腫は脊髄を圧迫し、不可逆的な神経障害を引き起こす可能性があるため、慎重な評価が必要であり、原則禁忌です。
合併症

合併症ってどんなことがあるんですか?

頻度は高くないけど、発生すると重大なものもあるよ。
しっかり確認しておこう!
硬膜外麻酔には、以下の合併症があります。
- 血圧低下
- 徐脈
- 局所麻酔中毒
- 硬膜穿刺後頭痛
- 硬膜外血腫
- 硬膜外膿瘍
血圧低下
硬膜外麻酔は、薬剤の影響などで交感神経を遮断します。遮断されると末梢神経が拡張され、血圧が下がります。麻酔レベルが高いと心臓の交感神経も遮断され影響が大きくなります。
徐脈
硬膜外麻酔が高位まで広がると、心臓の交感神経遮断が起こり、心拍数が減少します。また、迷走神経の相対的優位により副交感神経が優位となるため、さらに徐脈が進行することがあります。まれに心停止へ移行することもあるため心電図波形にしましょう。
局所麻酔中毒
血管内注入や過量投与により、局所麻酔薬が全身に作用し中毒症状を起こすことがあります。初期症状は耳鳴り、金属味、めまい、意識障害、けいれんなどです。
硬膜穿刺後頭痛(PDPH)
硬膜外麻酔中に誤って硬膜を穿刺してしまうと、脊髄液が漏出し、髄液圧が低下します。これにより脳の下垂や血管拡張が生じて、特徴的な頭痛が起こります。座位や立位で増強し。臥位で軽減する頭痛が典型的な特徴となります。通常、穿刺後24〜48時間以内に発症します。
硬膜外血腫
硬膜外腔へのカテーテル挿入や穿刺時に、静脈叢や動脈を損傷することで出血が起こり、血腫が形成されます。抗凝固薬投与中の患者さんや、出血傾向のある患者さんでのリスクが高まります。血腫により下肢のしびれ・麻痺・運動障害が生じることもあります。
硬膜外膿瘍
穿刺部の皮膚や器具の不潔、または血行性感染により細菌が硬膜外腔に侵入し、膿瘍を形成します。免疫抑制患者さん、糖尿病患者さん、長期カテーテル留置がリスク因子となります。血腫同様、膿瘍が進行すると下肢のしびれ・麻痺・運動障害が生じることもあります。
まとめ
今回は、硬膜外麻酔について解説しました。
硬膜外麻酔は、術中・術後の疼痛管理に非常に効果的な手段です。一方で、体位の工夫・禁忌の確認・合併症の早期発見といった看護師の役割が極めて重要です。
これから手術室看護師を目指す方や、新人看護師の皆さんの参考になれば嬉しいです。今後も実践に役立つ情報を発信していきますので、ぜひチェックしてくださいね!
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